一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(以下SDGsジャパン)は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対する声明を発表しました。

「だれ一人取り残すことなく、貧困のない持続可能な社会へ、この世界を変革する」

これは、2015年に国連で策定された世界の指針、「持続可能な開発目標」(SDGs)の根底にある理念です。私たち一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(以下SDGsジャパン)は、このSDGsの理念の中に「2019年コロナウイルス病」(COVID-19、いわゆる「新型コロナウイルス感染症」)の克服のカギを見出すヒントがあると考えます。

世界各国が緊急対策を打ち立てる中、私たちは、いま一度SDGsを参照し、「社会的距離戦略」(Social Distancing)による一時的な隔離と遮断の奥底に、県境や国境など地理的な「境」だけでなく、あらゆる差別、断絶を超えた連帯と包摂の精神を据えることが必要です。COVID-19への対応が、分断と排除につながるようなことがあってはならないと考えます。

私たちは、上記観点から、SDGsの理念に基づき、以下の3つを確認します。

1.未来世代を含めた「誰一人取り残さない」経済的・社会的包摂のための施策の導入を。
ゴール1(貧困)、3(健康)、4(教育)、5(ジェンダー)、8(持続的成長と雇用)、10(格差)、11(持続可能な人間居住)

「社会的距離戦略」に基づく政策の実施により、14億人の子どもが学校に通えなくなり、多くの人々が仕事を失い、経済的損失と社会的な孤立を余儀なくされています。これらに対処する経済政策は、SDGsの精神に基づき「もっとも遠くにいる人を最初に」「誰一人取り残さない」形で行われる必要があります。社会全体の経済的なダメージを抑え、景気を浮揚させることは必要ですが、それ以上に、最も厳しい状況に置かれた人々の生命と生活を救済することに最大限の力を注ぐ必要があります。また、COVID-19の世界的蔓延は、以前から存在していた世界の様々な課題をより深刻にしています。緊急対策がもたらす遮断や隔離は、貧困や疾病、紛争、迫害などで苦しんでいる人々にさらに過重で深刻な影響を及ぼしています。今後の危機に備えて世界の保健医療制度を一層拡充する必要があります。
 
2.隔てられた物理的距離をつなぐ連帯と包摂を。
ゴール16(参画)、17(パートナーシップ)

新規感染をできる限り減らすため、「社会的距離戦略」に基づく一時的な遮断や隔離は必要です。しかし、これらの施策は科学的根拠に基づき、必要最低限に留めるべきです。助け合う、認め合う、敬意を払うなど「人権の確立」が今ほど求められている時はありません。
遮断や隔離の状態にある人々には、隔てられた物理的距離を代替する接続(コネクティビティ)の手段を最大限保障するべきです。特に、隔離されたCOVID-19患者や感染の疑いのある人、自己検疫の対象となっている人には、積極的に、メディアやインターネットへのアクセスなど、社会への接続のための代替手段が保障されるべきです。

3.透明性と公開性を担保し、民主主義と法的手続きを遵守した政策形成と対応を。
ゴール16(ガバナンス)

「社会的距離戦略」に基づく施策は、経済的・社会的活動の自由および移動の自由をはじめ、国民・市民にあまねく認められた憲法上の権利を制約しかねません。これらの施策の導入に際しては、透明性と公開性を最大限担保し、民主主義と法的手続きを遵守する形で行われる必要があります。また、HIVや結核などこれまでの感染症との闘いの教訓に基づき、COVID-19患者や感染の疑いがある人、隔離対象者、自己検疫対象者などの人権を始めとするあらゆる権利を最大限保障するとともに、その経済的損失も最大限補填される必要があります。COVID-19との闘いに加え、COVID-19に関わる差別や偏見、虚偽情報をなくすために最大限の方策をとる必要があります。

SDGsジャパンは、COVID-19に関連するすべての施策が、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)と地球規模感染症対策の重点化、人権の尊重、ジェンダー平等、貧困・格差の解消、経済的・環境的公正、教育機会の保障など、SDGsの理念を踏まえて実施されるよう求めます。

また、全世界の市民社会に向けて、参加・連帯と協働の規範を改めて確認しよう、と呼びかけます。

 (参考:COVID-19対策とSDGsをつなぐヒント)
■1■ ゴール17「パートナーシップ」

SDGsは、ゴール17において、「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」として、マルチステークスホルダーによる意思決定プロセスを重視しています。これは、対策を検討する際に最大限重視すべき点です。

■2■ 持続可能な社会・経済・環境への変革
SDGsは、「このままでは2030年の世界と日本は持続不能である」という考えを前提として、これまでの政策からのトランスフォーメーション(変革)を訴えています。経済対策においては、COVID-19の世界的な流行により、特に経済的困窮、ジェンダー、性的指向、障害、国籍、民族、そしてそれらによる複合的・交差的な影響を受けている人たちがより周縁化され、脆弱な立場に置かれる恐れがあります。COVID-19対策の観点から言えば、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に加え、高度医療の充実とアクセスの保障、スフィア基準等の国際基準を満たした一時隔離施設等の拡充など、「地球規模感染症対策」の拡充が不可欠です。

■3■ ゴール16「参加型民主主義と透明性・説明責任を満たすガバナンス」
SDG16では、「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」ことが目標とされています。COVID-19のように、治療薬やワクチンもない現在において、政府や国際機関による対策の発表は、透明性と説明責任が十分に果たされたものでなければなりません。

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