2020年は「看護の日・看護週間」制定30周年・ナイチンゲール生誕200周年の記念すべき年です。これにあわせて目下、Nursing Nowキャンペーンが世界で開催されており、日本でも看護界が一丸となって取り組んでいます。これらの集大成といえる記念イベントとして、公益社団法人 日本看護協会(所在地:東京都渋谷区/会長:福井トシ子)は、「Nursing Now:看護の力で未来を創る」を2021年1月21日(木)にZoomウェビナー形式で開催しました。

同イベントは「『看護の日・看護週間』制定30周年記念式典・第10回『忘れられない看護エピソード』(主催:厚生労働省/日本看護協会)」と「Nursing Nowフォーラム・イン・ジャパン(主催:日本看護協会/笹川保健財団)」2つのプログラムを午前と午後に分けて行いました。当日は看護職などの医療関係者、一般の方も含め約1,400人の個人の方が視聴され、またあわせて約260カ所のパブリック・ビューイング会場が設置されました(参加登録総数約5,300人)。

 

◆「看護の日・看護週間」制定30周年記念式典・第10回「忘れられない看護エピソード」表彰式を開催

 

午前中は、まず「看護の日・看護週間」制定30周年記念式典が執り行われました。主催者である田村憲久厚生労働大臣と福井トシ子会長が挨拶。福井会長は、制定から約30年が経過し、現在就業している看護職の方の中には、学生時代に「看護の日・看護週間」事業を通じて看護の魅力を感じて看護職を目指した人も多いのではないかと述べました。その後、来賓からのビデオメッセージや「看護の日・看護週間」30年間を振り返るVTRを紹介しました。

 

その後行われた第10回「忘れられない看護エピソード」は、厚生労働省と日本看護協会が「看護の日・看護週間」事業の一環として毎年実施しているもので、看護の現場で生まれた心に残るエピソードを募集・表彰している事業です。受賞作品を通し、看護の大切さを感じていただくと共に、看護の心やケアの心を育む一助となることを目的としています。第10回は、全国から2,702作品のご応募を頂き、合計21作品の入賞が決定いたしました。イベントでは上位5作品の受賞者と受賞作品の表彰、受賞者による喜びの声の紹介、ゲスト審査員の荻野目洋子さん(歌手)らによる作品の朗読、特別審査員の内館牧子さん(脚本家)による講評が行われました。

 

今回、Nursing Nowキャンペーンにちなんで設けられた「Nursing Now賞」の受賞者である渡邉美香さんはスタジオ出演し、福井会長より直接表彰状授与が行われ、PR大使のハローキティが駆け付けお祝いをしました。福井会長による作品の講評と原作者である渡邉さんとの作品に関するトークの後、荻野目洋子さんによる作品の感想や自身の出産のエピソードについて、助産師である日本看護協会常任理事・井本寛子を交えてのトークショー、荻野目さんによる「ダンシング・ヒーロー」の歌のパフォーマンスなどが行われました。

 

第10回「忘れられない看護エピソード」

https://www.nurse.or.jp/home/event/simin/episode/10th/index.html

 

<イベントアーカイブ映像>

https://www.nurse.or.jp/nursing/practice/nursing_now/nncj/event/

※こちらの動画は2021年1月27日(水)より視聴可能となります(予定)。

 

【内館牧子さん講評】

 

今年もとても良い作品がたくさん集まりました。今回のコロナの問題が起きるずっと前から、作品の講評と共にもっと看護師の待遇を改善することを真剣に考えようと申し上げてきました。私は12年前に急性心臓病に倒れ、生死の境をさまよい、入院した時に看護師の力がどれほど大きいかという事が骨身にしみました。私だけではなく、誰もが看護師から希望や安らぎを受け取っていると思います。そして今回コロナが猛威を振るっている中、看護師がどれほど献身的にわが身を捨てて尽くしているか想像に難くありません。そんな中、看護師たちの給料が引き下げられています。応募されたエピソードを読んでいただければ、看護師たちが患者を助けるために心を配り、体を使い、単なる職業を越えた使命感に溢れているという事を感じ取れると思います。看護職を物心両面で支える事が国の力になると考えています。私達はそれぞれのやり方で支援していく努力をしていきたいと思っています。

 

【荻野目洋子さんコメント】

 

 今回、看護職の方々の素晴らしい活動のお手伝いができればと思い、ゲスト審査員を引受させて頂きました。命の重さやその時の情景が目に浮かぶ大変共感を覚える素敵な作品ばかりでした。中でも共感を覚えた作品は、看護職部門優秀賞を受賞した「いっ、て」という作品でした。朗読は皆様の一つ一つの想いがちゃんと伝わるように読ませて頂きました。娘を出産した時に明るい笑顔と温かい言葉でたくさんの看護職の方々に支えて頂きました。新米ママにとってはとても心強い存在だと思います。今年は新型コロナウイルス感染症が拡大し私達の生活が大きく変化し、手洗いやうがい、ギリギリまでマスクをするなど出来ることは実践しています。それでも前に進んでいきたいという気持ちは皆さん一緒だと

 

■上位入賞5作品一覧

看護職部門

・最優秀賞   その声は 齋藤 泰臣  43歳 佐賀県

・内館牧子賞   ハル子ちゃんのおにぎり 久保 百香 56歳 埼玉県

 

一般部門

・優秀賞    今も元気に出してます  新田 剛志  40歳  大阪府

・内館牧子賞  看護師として      池田 幸生  58歳   東京都

 

Nursing Now部門

・Nursing Now賞 セルフケア看護の実践によるハピネス 渡邉 美香  51歳  東京都

 

■「看護の日」について

 

近代看護を築いたフローレンス・ナイチンゲールの誕生日にちなみ、5月12日は「看護の日」に制定されています。看護の心、ケアの心、助け合いの心を老若男女問わず誰もが育むきっかけとなるよう、旧厚生省により1990年に制定され、2020年は30周年を迎えます。5月12日を含む日曜日から土曜日までを「看護週間」とし、毎年各地で看護に関連したイベントや活動を実施しています。

 

◆「Nursing Nowフォーラム・イン・ジャパン」開催

 

午後からは、「Nursing Nowフォーラム・イン・ジャパン」(主催:日本看護協会/笹川保健財団)が開催されました。Nursing Nowフォーラム・イン・ジャパンは、Nursing Nowの趣旨である、看護職が持つ可能性を最大限に発揮して健康課題に積極的に取組み、人々の健康向上に貢献するために、看護職と看護職を支援するパートナーが行動することを鑑み、人々の健康な暮らしを支援する看護、医療提供の効率化に資する看護等についてエビデンスに基づいた議論を行い、看護の社会的な価値を明らかにすることを目的として開催されました。 

 

■オープニングセッション

オープニングセッションは、Nursing Nowについての理解を深め、人々の健康な暮らしを支援する看護、医療提供の効率化に資する看護についての現状と期待について議論し、直後に行われる分科会につなげる目的で開催されました。厚生労働省および主催者の挨拶に引き続き、世界的なキャンペーンを推進するNursing Now共同議長のナイジェル・クリスプ卿、世界保健機関(WHO)主任看護官エリザベス・イロ氏、国際看護師協会(ICN)会長アネット・ケネディ氏から届いたビデオメッセージを紹介し、国内外のスピーカー5名による講演が行われました。

冒頭で福井会長は、通常(または平時)はもとより現在の危機的な試練に直面した社会では、看護職は医療機関での看護、地域住民の保健活動などに加えて、地域で暮らす全ての人々を支える健康な社会の醸成にも力を発揮することがより一層求められていると述べ、このフォーラムを通じて「看護の力で未来を創る」第一歩としたいと述べました。Nursing Now、WHO、ICNからのビデオメッセージでは、新型コロナウイルス感染症に対峙する看護職へのお礼と共に、看護職の活動を後押しする力強いメッセージが寄せられました。その後、Nursing Now事務局長のバーバラ・スティルウェル氏による基調講演では、Nursing Nowの目指す方向性について紹介すると共に、保健医療分野の労働力の半数を占める看護職無しには保健医療が成立しないこと、看護職が能力を最大限に活用できるようにすること、それにはナース・プラクティショナーのような行動実践が重要であること、各看護職が影響力のあるリーダーになることが必要であることなどを述べました。また、フィンランド看護師協会会長ニナ・ハテラ氏から国を越えて地域で連携した取組み、分科会につながる発表として千葉大学大学院教授手島恵氏、シンガポール看護師協会前会長スウィーヒア・リム氏、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループJapan Community Impactマネージャー内田菜穂子氏から講演が行われ、これらを通して、看護職の活動・実践はSDGs達成の中心となるべきものであり、看護職が持つ力をより積極的に活用すべきであることが確認されました。

 

■分科会

【分科会1:トリプル・インパクトと政策】

分科会1では、政策を推進していく上でインパクトを及ぼすエビデンスの重要性について検討することを目的としました。Nursing Nowのきっかけとなった「トリプル・インパクト」報告書が示したSDGsの3つの目標(目標3「すべての人に健康と福祉を」、5「ジェンダー平等を実現しよう」、8「働きがいも経済成長も」)に看護職がこれまで以上に貢献し、看護職が健康な社会の醸成に関わっていくためには、様々な制度や環境を整えていくことが必要です。社会やSDGsへの看護の貢献、エビデンスを用いた政策推進の成功事例等を通じて、政策決定に影響を及ぼすエビデンスの重要性につき議論し、Nursing Nowキャンペーンの目標の一つである「政策実現に向け政策・意思決定者へのエビデンスの提供」の意義を明らかにすることを目指しました。

 

トリプル・インパクトと日本の看護の関係性について荒木暁子常任理事から説明した後、東京大学大学院教授真田弘美氏から褥瘡対策から特定行為研修に向けた政策研究に関して講演がありました。パネルディスカッションではカナダ、アイルランド、韓国、チリ、レバノン、オーストラリアの看護師協会長から各国での事例の紹介の後、演者・視聴者と意見交換を実施しました。

 

【分科会2:在宅看護と持続可能な社会 ~看護師が社会を変える~】 

看護師は、保健医療専門職としての関わりに加え、人々の生活支援機能をもつため、今後高齢化が急進する世界各地における地域とその住民の健康の維持増進への関与が強く望まれています。特に、人々が自らの健康を考えるというプライマリーヘルスケア(PHC)の理念を基にした住民の健康意識の変革、ひいては適正な医療資源の効果的な活用による持続可能な社会の実現・SDGsの達成のためには、今後ますます看護師が活動範囲を広げていく必要があります。

在宅看護の長い歴史を持つカナダの実践者ジュディス・シャミアン氏、途上国での看護師の自立を支援している看護教育者マーラ・サーモン氏、およびグローバルヘルスの観点から看護の在り方を追求する看護研究者アンドレア・バウマン氏の3名による解説と、笹川保健財団が行う「日本財団在宅看護センター」起業家育成事業を修了し、起業した3名の看護師の実践事例から、これからの看護(師)の地域社会における役割・可能性について検討を深めていきました。

 

【分科会3:災害に強いコミュニティ、安全・安心な社会の構築に向けた看護の貢献】

災害は、気候変動や急激な人口増加と都市化の進展、社会的・宗教的対立などにより、世界的に発生頻度、規模ともに深刻さを増しているといわれています。災害リスクの削減に向けては2015年には国連防災世界会議において仙台防災枠組み2015-2030が採択され、保健医療分野の取り組みの重要性に関心が当てられることとなりました。ICNは、所信声明において、「今後の災害リスクの予防及び既存の災害リスク削減において、看護師の関与が不可欠である」と述べるとともに、「仙台防災枠組」への支持を表明しています。

 日本は、自然災害の多い国であり、災害リスクの削減・対応・復旧への取り組みにおいては世界をリードしています。看護分野においても、阪神・淡路大震災や東日本大震災等の大規模災害を経験する中で、災害リスク削減・対応・復旧のあらゆる段階で、災害から人々の生命を守り健康な暮らしを支援する総合的な実践であることを内外に示してきました。また、今世界が大きな困難に直面しているCOVID-19への対応においても、看護職は最前線で人々の命と生活を守ることに尽力しています。このような背景のもと、災害に強いコミュニティづくりに向けて何が必要であるか、また、安全・安心な社会の構築に向けて看護がどのように貢献できるのかを、減災復興の第一人者の講演と海外の活動事例の紹介、これまでの日本での災害看護の取り組みを振り返りパネルディスカッションを通して議論しました。

 

■クロージングセッション

クロージングセッションでは、各分科会のモデレーターより議論を共有した上で、締めくくりとして、福井会長が「Nursing Nowニッポン宣言」を発表しました。 

分科会1は、看護職1人1人が声を上げ、必要な場所に必要なエビデンスを届けること、そのためにエビデンスの集積が必要であることを報告し、分科会2からは、地域のケア現場において、地域の住民と看護職がしっかりと話し、住民が自身の健康をどのように考えていくかに力を注いでいってほしいことが共有されました。分科会3からは、災害時・日常時に不可欠な看護職自身が守られるべき存在であること、看護職が日常からコミュニティの一員として災害時を見据えた活動を行っていくことの重要性が確認されたことが報告されました。

 

■Nursing Nowニッポン宣言

・   健康な地域・健康な社会づくり、人々の生涯を通した安心・安全で健康な暮らしに、これまで以上に貢献します。

・   看護職が社会のニーズを満たし、あらゆる場でその力を十分に発揮できるよう、実践から政策まで、それぞれの変革を推進するための意思決定に参画します。

・   利用可能な最善のエビデンスに基づく、よりよい意思決定に寄与するため、幅広くエビデンスの集積に取組みます。

・   ­これらの日本における取組み・成果を世界と共有し、世界的な目標であるSDGsの達成、世界の人々の健康向上に尽力します。